「いらっしゃい、リーシャさん」

「こんにちは」

メリアーデは玄関で立ち止まったままのリーシャを手招きで家へ招き入れる。

洗い物をして濡れていた手を布で拭きながら歩み寄り、リーシャが持っていた麻袋を覗き込んだ。



「今日の材料は買えましたか?」

「えぇ、鶏肉とトマトとタマネギ、ジャガイモ、ニンジンにグリーンオリーブそれから…」

リーシャは麻袋から取り出したものを順に取り出し、長机に一つずつ並べていく。

それをメリアーデは真剣な目で品定めをし、リーシャが選んだ食材が新鮮であるか確認をしているのだ。
一通り確認を終えると、眉を寄せて難しい顔をしていたメリアーデの表情がぱっと明るくなり、いつもの笑顔が戻る。




「うん、合格です!」

メリアーデから文句なしの合格点をもらえたリーシャはひとまず胸を撫で下ろした。



「食材選びに関しては私はもう何も言うことはありませんね。今後は何も口出ししませんのでこれからもこの調子で頑張ってください」

「ありがとう。頑張るわ。……ところで今日は何を作るの?」

料理のレッスンを受けるようになって、明らかに変わったことといえば、料理に対する苦手意識だろう。

今までは教えてくれる人さえおらず、リーシャ自身も必要に駆られていなかったため漠然とした苦手意識があったのだが、メリアーデからレッスンを受けるようになってからは、野菜の切り方や味付け、食器の選び方に至るまで、自分の身となり知識となることが楽しくてしょうがないのだ。