*空side
泣き虫兎と溝口を食堂に送り出すと、豊
が唇を尖らせた。
「もー、なんで澪ちゃん逃がしちゃうん
だよー」
逃がしちゃうんだよって……獲物じゃな
いんだから。
ていうか……。
チラッと豊を見ると、フェンスにもたれ
かかりながら、どこか遠くを見てる。
「……お前、好きな女居たんだな」
俺がそう言うと、豊がビックリしたよう
に目を見開いた。
「へ、なにいきなり」
「や、だから豊、好きな女居たんだなっ
て」
「誰のことだよ?」
クスッと笑いながら俺を見てくる豊。
「……だから、さっきの」
「澪ちゃん?」
「違う」