唇をきゅ、と引き結んだまま、前を見つ
めていると苛立ったような声が横から聞
こえてくる。
「……おい、こっち向けって」
「……っ」
その声に、というか向坂くんに逆らうな
んてそんな命知らずな事、出来るわけも
なくて、恐る恐る横を見上げる。
すると向坂くんは、そんな私を見て、た
め息をついた。
「……はぁ。なんでもう泣きそうなんだ
よ、お前」
「ご、ごめんなさい……」
「泣くな。うぜーから」
「……っ!」
───『泣くな。うぜーから』
その言葉が何度も脳内を巡って、胸が苦
しくて、余計に目頭が熱くなって。
せめて泣きそうなのがバレないよう、前
を向いて、うつ向いた。
放課後。
「……澪、大丈夫?」