「汚ぇ手で……澪に触んな」


「なにキレてんの?そんなに俺が近付く
のが気に入らない?嫉妬かよ」



矢渕くん……いつもなら向坂くんが怒っ
てもヘラヘラって笑って誤魔化すのに、
なんで今日はそんなに意地になってるの




すると、ふと、矢渕くんが今度は私を見
た。



それから、なんともいえない表情を浮か
べてから、微かに笑う。



「……お前はずっと俺に怯えて、彼氏な
んて出来ねーと思ってたけど……。案外
軽い女だったんだな。顔が良ければいい
のかよ」


「違っ……向坂くんは……!」


「うるせぇな!」



向坂くんの見た目を好きになったんじゃ
なくて、ちゃんと内面も好きだと思った
の。



そう言おうとしたけれど、矢渕くんの声
に遮られてしまった。



「……誰がノロケなんか聞くかよ」