初めて見た。こんな矢渕くんの顔。
いつも意地悪で、余裕そうで。なのに、
今は。
なんでかすごく、切な気なの……。
「す、すすんでる……って?」
「だから、キスとか、もうセックスまで
しちゃってんのかってきいてんだよ!」
バン、と机を叩いてそう怒鳴った矢渕く
ん。
当たり前だけど、まだクラスには人が居
て、皆ビックリしたようにこっちを見て
いた。
キスとか……の後、な、なんかものすご
い単語が飛び出てきた気がする。
想像するのだって困難なのに……それを
もう向坂くんとしちゃってるなんて……
そんなの、あり得ないよ!
「あ、あ、あの……」
ボボッと真っ赤になっていく私。
それを何かと勘違いしたのか、矢渕くん
は一瞬眉を寄せた後、嘲笑を浮かべた。
「あんなに純情だったお前も、もう汚れ
てるんだ?」