それは人見知りな私の、精一杯の"やだ"
って意識表情で。



『やめて……矢渕くん』



どうにか絞り出した声は、笑っちゃうく
らい情けなかった。



『じゃあ、こーかんじょうけんだ!』


『こーかんじょうけん?』


『おう!なにか"とりひき"するときには
、じょうけんを付けるんだって!』



その時の私には、取り引きの意味も、交
換条件の意味もわからなかったけど、と
にかく頷いた。



『お前、今日から俺のゲボクな』



頷いた私に告げられた、命令。



"下僕"の意味もわからなくて首を傾げれ
ば、どうやら矢渕くんのお手伝いをすれ
ばいいらしいことを教えられた。



それから……


矢渕くんが何かを取ってこいって言えば
取ってきたし、幼稚園で用意された数字
のワークも、矢渕くんの代わりにやった




じゃないとまた、スカート捲るぞって、
脅されていたから。