その声に、ビクッと震える。



ぎゅ、と膝の上で握った拳に、汗がじわ
じわと蔓延していく。



「男嫌い、治ったの?───じゃあ、俺
のことももう怖くなくなっちゃった?」



クスッと笑う矢渕くん。



なにも言えずに唇を噛み締めてうつむい
ていると、矢渕くんが向坂くんを見直し
て、不敵に笑った。



「澪は俺の下僕だよ。俺は澪の、ご主人
様」



──『お前、今日から俺のゲボクな!』



そんな声が、甦る。



矢渕くんは、私の肩を抱くと、耳元で小
さく囁いた。



「ご主人様が帰ってきて嬉しい?」



と───。