なんてこった!と一人でパニクっている
とガシ、と向坂くんに肩を掴まれ、もの
すごい真剣な顔で見つめられた。



「ていうか澪が来てくれないと俺はあの
女の暴走を止められない。そんな術はも
ち合わせていないんだ」


「ぼ、暴走?」



───つまりは、こういうことだと言う




向坂くんのお家はご両親が共働きで、ほ
とんど日本には居ない。



それで、下にいる三人の兄弟をいつも、
向坂くんが面倒を見ている。



だけど家に泊まれたのは、昨日ご両親が
日本へ帰ってきたから。



で、なんらかのハプニングで、向坂くん
の彼女が私だってバレたらしい。なんで
なのかは教えてくれなかったけど。



それで今朝、家に連れてこいと言われた
んだとか。



「澪、頼む。あのハイテンション女を阻
止できるのはもうお前しかいないんだ」


「えぇ?」



なんか大袈裟じゃない?



それにそんな急に……。彼氏の家にお邪
魔するには、それなりに勇気と心の準備
が要る。