そう謝る澪に、胸の奥が苦しくなる。
「悪いと思ってるなら……俺のモノにな
ってよ」
わかってる。そんなの夢物語でしかない
ってこと。
意地悪な質問してごめんな。
「……つーか…触りすぎ!」
ふと、それまで黙ってた向坂がそう声を
張り上げて、俺の腕の中から澪をひった
くった。
その時の向坂の瞳が、オモチャを必死で
守る子供みたいで、少しだけ笑えた。
「なあ向坂。最後に澪とキスさせてよ」
「させるかアホ!なんなら俺が相手しま
すけど!?」
「ん?じゃあ、する?俺とキス」
からかってきたからそう言っただけなの
に、向坂は真っ青になってぶるぶると首
を横に振った。
それを見た澪が笑ってるのを見てたら、
もう復讐とか馬鹿馬鹿しいって思えてき
た。
澪が笑ってるなら……それでいいや。そ
の分俺も、幸せになれるから。