*燐side
偽善者が。
例えそう言ったとしても、こいつは引か
ないんだろう。
澪も厄介な相手を連れてきたもんだよな
。
だけど……。
そんないきなり出てきた男なんかの言葉
に、心が揺れて、泣きそうになる俺も俺
だ。
誰かに聞いて欲しかった───なんて、
俺も案外弱い男だったんだな。
ごく普通の家庭だった。
父さんが居て、母さんが居て、俺が居る
。そんな普通だけど、幸せな日常。
両親は俺を一心に愛してくれたし、俺も
そんな二人が大好きだった。
それももう、そこらの家庭よりかは仲が
良いくらいに。良いと信じてた。