「ほんとに澪を傷付けたかったなら、な
んで俺にあんなこと言ったんだ。なんで
俺がこの家にいるのに実行したんだ。
……なんで鍵、かけてねーんだよ」
矛盾してるんだよ、と吐き捨てた向坂く
ん。
そんな向坂くんに、燐ちゃんは笑ってみ
せた。
「そんなの、お前にこの場面を見せたら
もっとショックだろうって思ったからだ
よ。それに鍵はかけわすれてたんだ」
「見苦しい言い訳してんなよ。お前が鍵
をかけ忘れるわけねーだろ」
「君が俺の何を知ってるの?」
それまで笑っていた燐ちゃんが、すう、
と目を細めてそう言った。
その口調もどこか、苛立っていて。
だけど向坂くんは、そんな燐ちゃんを、
しっかりと見つめたんだ。
「お前、全部吐き出せよ。ほんとの気持
ちも、胸のモヤモヤも、全部」
そう言ったの。
そしたら燐ちゃんはそんな向坂くんを睨
み付けてから、悔しそうに目を反らした
。
「ほんと、お人好しばっかりだ。この家
は」