「さ、向坂くん!」
「お、おう」
背筋をピン、と伸ばしてそう呼ぶと、つ
られて向坂くんも背筋を伸ばす。
そんな向坂くんに、微笑んだ。
「嬉しい!」
「じゃあ……」
「でも今日は三木くんと約束してるので
、ごめんなさい」
そう言うと、一瞬、パアッとなった向坂
くんの表情が、あっという間に不機嫌に
なった。
あれ……?もしかして言い方間違えた?
「三木と約束って、何」
「えと、今日放課後に教室でお話するこ
とに……」
「は?どっちが誘ったわけ」
……あれ、なんだこの不穏な雰囲気。
「わ、私ですけど───」
そう言うと、向坂くんが、見たこともな
い真っ黒い笑顔を浮かべた……。