キスを受け入れたら、少しは伝わってく
れるだろうか、なんて思いながら。
だんだんと身近になっていく彼の吐息を
唇に感じながら、ゆっくりと瞼を閉じた
。
一瞬、押し付けられるようにして触れた
唇は、すぐに離れていき。
目を開いた先に見えたのは、苦しそうに
顔を歪めた向坂くんだった。
「……なんで受け入れてるんだよ。俺の
事は嫌いなのか?だったらキスなんて、
させてんなよ」
違う……違うのに。
何を葛藤しているんだろう。私も好きだ
よって言えばいいのに。
「怖いの……」
だけど口から零れたのは、そんな言葉で
。まるでそれが引き金になったかのよう
に、涙と言葉が堰を切ったように溢れる
。
「怖いの。好きだって言ったら、さ、向
坂くんが離れていきそうで……っこれも
男慣れの一貫なんじゃ……って」
「……んだよそれ」