「お前が……澪が、好きだ。誰にも渡し
たくねぇ」



もう一度出てきた言葉は、やっぱり私を
好きだって言ってくれていて。



澪、ってさりげなく呼ばれた名前に、心
が震える。



だけど、私は───……ふと、あの日の
事を思い出していた。



向坂くんにナンパから助けてもらったあ
の日、確かに向坂くんは言ったんだ。



『俺はお前が俺を嫌いだから構うんだ』
って。好きだったら構わねぇ、とも。



だから、怖い。



好きだって言って、構われなくなったら
って。これも男慣れの一貫だったらどう
しよう、って。



向坂くんを嫌いでいるのが、いいのかな
、なんて───……。



私が何も言わないからか、向坂くんが眉
間にどんどん皺を寄せていき、



「好きって言え。言えないなら……キス
するからな」



そんな向坂くんの言葉に。