なにが無理なの───そう訊こうとした
意思は、たちまち私を包み込んだ向坂く
んの匂いにほだされてしまった。
あ……煙草の匂い、しない……。
約束、守っててくれたんだ。普通なら、
破っても可笑しくないのに。
そんな些細な事が嬉しくて。やっぱり好
きだ、と思った。
でも……、私、気付いたんだ。
私は向坂くんに思いを伝えられない。
「……あの日は、ごめん。いきなりあん
な無理やりなこと、して」
その言葉に、ふるふると首を振る。
向坂くんは、そんな私を見つめると、少
しだけ身体を離して、私を見つめた。
それから───……。
「───好きだ」
確かに、そう言ったんだ。
「……え?」
都合のいい、幻聴かな。だって可笑しい
。向坂くんが私を好きだなんて、そんな
の。