ぐい、と痛いほどに掴まれた手からは、
一体彼が何をどう思ってそうしているの
か、わからない。
ただ、久しぶりに触れた彼の熱が、すご
く愛しい。嬉しい。
離れたくない、とまで懇願するほど。
そんな自分が笑えてくる。
あれほどまでに男の子は嫌いだったのに
、なんでこんな気持ち……。
恋なんて感情、まだ、持てたんだね。
連れてこられたのは、屋上。
なんだか向坂くんには、空き教室か、屋
上にしか連れてこられてないような気が
するのって、私だけかな。
「あの……向坂くん、この前は───」
「やっぱり無理だ」
この前はごめんなさい。
どうせなら言ってしまおうと。この意志
が消えてしまう前に言ってしまおうと口
を開いたのに、向坂くんに遮られちゃっ
た。
「向坂くん……?」