その日は一日中ボーっとしていて、気づいたらもう授業は終わってた


『すずどーしたのー?』

前の机に座って、ナッチが心配そうに顔をのぞき込む

『悩みでもあんのか?』

その隣に、川瀬も座って聞いてくる





『……あのさ』

あたしは小さく口を開く


『友達が悩んでたんだけど、好きな人に彼女がいた場合どーすればいいの?』

さすがに自分のこととは言えず、凄い早口で話した

『えーそんなの関係なくアタックするし!!別れるかもぢゃん』

ナッチはホントプラス思考よね…

『川瀬は?』

『俺?んー…とりあえず様子見て、別れなそうだったら諦める』


『…そっか』


その後は何も話さず、ナッチたちの会話を聞きながらげた箱に向かった


そこには戸城の姿があった…



『あっ棗今日うち来ない?新しいゲーム買ったぜ』

『あぁ…じゃあ後で行くわ。玲奈と帰る約束してるからさ』

『おまえ何だかんだ柏原のこと好きだよなぁ~』

『うっせーよ!!さっさと帰れ』



初めて戸城の口から聞いた柏原さんの名前…それだけなのに…すごく切なくて…やっぱり戸城は柏原さんが好きなんだって思い知る…こんなこと聞きたくないのに――…




『すず、なんか顔色悪いよ…』


『そっそんなことないよ』


ナッチに言われ、自分が今すごく酷い顔をしているのに気付き、無理やり笑顔を作った。この気持ちを誰にも知られたくないから…


戸城が『バイバイ』と言ったけど、あたしは返事をすることが出来なかった…