【戸城side】

俺と亜美は、学校から少し離れた喫茶店にいた


しかし、入って数分経っても、俺らは何も話さず沈黙が続いていた



俺は、とりあえず前に置かれた紅茶に手を伸ばそうとしたとき、亜美が口を開いた

『棗……あたしと付き合ってたときのこと覚えてる?』


亜美の質問に、俺はあぁ…と短い答えで返した

それでも、少し亜美は微笑み、また話し始めた


『あたしね…棗に告白された時すっごい嬉しかったの……でもそれと同じくらい不安だったんだ』


そう言った亜美の顔は、すごく悲しそうだった


『棗はあの時からすっごいモテて、女の友達も多くて……そのうち棗を取られるんぢゃないかって…怖かった』


そんなことを思っていたなんて、俺は全く知らない


『何で、今更そんなこと言うんだよ!あのとき言えば良かっただろ』

『言えないよ!そんなこと言ったら、重い女って思われそうで……嫌われたくなかった…』


亜美の目は、少し潤んでいた

でも……

『結局お前の方が、俺から離れていったよな…』


その言葉を言った瞬間、空気が重くなったのを感じた



そんな中、亜美の口から出たのは、信じられない言葉だった

『……あたし卓也とは付き合ってないよ』


『はぁ………!?』

こいつ……何言ってんだ?


付き合ってないわけないだろ……


俺は亜美と卓也がキスしてるのをこの目ではっきり見たんだぞ