『えっ……どーいうこと?』

そう冷静に聞きながらも、あたしの心臓はバクバクしていた

『前に屋上で棗に聞いたんだよ。彼女を作らない理由をさ』

そう言って、川瀬はそのときのことを思い出すように、空を見上げた


『戸城……何て答えたの?』

そう聞くと、川瀬はチラッとあたしを見て

『“相沢がまた嫌がらせされるかもだし、そのせいで相沢と話せなくなるのは嫌だからいらない”ってさ。棗が女のこと心配するなんて、まぢビビったよ!』

そう言って、笑う川瀬。でも、あたしはその言葉が信じられなくて

『ホントに…戸城はそう言ったの…?』

あたしが疑いの目で見ると、川瀬は大きくため息を吐いて

『…あのなぁーこんな嘘ついても、しょーがねぇーだろっ!!お前、少しは自信持っても良いんぢゃねぇーの?』

そう言った川瀬の目は、今まで見たことがないくらい優しい目だった



あたしは、まだ諦めなくても良いのかな…?

少しは…期待しても良いのかな…?




『そーいや棗には、ちゃんと俺が好きってのは、否定したんだろうな?』

否定……

『してないかも……』

何も言わずに、逃げたような…



その瞬間、優しい顔をしていた川瀬の表情が一変した

『はぁっ!?お前バカか?さっさと否定してこいっ!!由衣に知れたらどーすんだよ!』


…確かに、ナッチに知れたらめんどうなことになりそう…


信じちゃいそうだし……

『すぐに…否定しときます』

そう頭を下げて、あたしと川瀬はそれぞれの教室に戻った