あたしの言葉に、カッターを握る柏原さんの手が強くなる



『じゃあ…棗の前から消してあげるっ!!』


そう叫ぶと、カッターを振りあげる柏原さん。あたしはギュッと目を瞑った









でもいつまで経っても痛みを感じず、ゆっくり目を開ける






そこには確かに柏原さんが立っていたけど、さっきまでの強気な表情はなく、カッターを持つ手は震えている…



『何で………棗……』


ーーカシャンッ

カッターの落ちる音が、静まり返った空間に響く






今…棗って言った……?






自由を取り戻した体で、後ろを振り向くと、そこには少し呼吸を乱した戸城が立っていた