それでも靴箱に着けば、嫌でも思い出す

足がうまく動かない…必死に止めようとしても、足は震え出す


あの臭いが…光景が脳裏に、はっきり浮かぶ





う゛っ…


胃の奥から何かが込み上げてくる…それでも唾を飲み込み沈め、目の前のロッカーに手を伸ばす





その手は、もちろん震えていた…


ガチャッ


誰もいないげた箱に、音が響く


ゆっくり扉を開ける

少し空いた隙間から、朝のような異臭はなく少し安心したが、生ゴミの代わりに靴箱に入っていたのは、沢山の丸められた紙くず…

その一つを開く


『きゃっ』

あたしは思わず手を離した


床に落ちた紙くずからは、蝉の死骸が飛び出していた

その蝉があたしを見つめてるようで、あたしはその場から動けなかった………





『ヒッ…ク…ウゥ…ッ』



この日初めてあたしは涙を流した