「……え?」 オレの目は男を見たまま固まる。 どういうことだ? 周りを見渡してみるが、男の視界にいる人物はやはりオレしかいない。 あの言葉は、独り言でなければ、オレに向けられたものだ。 ってか、こういう一般客がいるところで言う言葉じゃないだろう! 相変わらず奴は黙ってオレを見つめている。 とりあえず、止めていた指を再び動かす。 ピンポン 「次、止まります」 バスのアナウンスがやけに大きく聞こえた。