私は待った。

キョウくんは、来ると思ったから。

15時20分・・・。

人通りの少ない昼から夕方にかけての間の時間。

どこからか、荒い息が聞こえてくる。

俯いた私の耳に、愛しい声が響いた。

「ラン、先輩っ・・・ごめ、遅く、なった・・・」

「キョウくん・・・大丈夫?」

キョウくんの顔は青白く、目は血走っている。

「言い訳に聞こえるかもだけど・・・母さんが、倒れて、」

「お母さんが・・・!?」

「あ、今は安定してるみたいだけど。元々体弱かったから」

「大丈夫なの・・・?」

「大丈夫、それで、ごめん。待たせてるのわかってたんだけど、安定するまではそばにいてやれって、医者に言われて」

「そっか・・・私は全然いい、けど今日はお母さんのところに戻ってあげて」

「でもっ」

「折角来てもらったけど。デートなんていつでもできるし」

「・・・ホントごめん。俺、」

「ん?」

キョウくんは、少し走って遠くに行って、きびすを返して言った。

「ラン先輩の、そういうとこ好きっ!!」

不意打ちなんて、ズルい。