「気をつけー。礼!」


「ありがとうございました」というのとチャイムが同時に鳴り、授業が終わった。

私はすぐに夏川君にお礼を言った。

「さっきは助けてくれてありがとう。 ごめんね、ごめんね。 本当にありがとう」


ペコペコお辞儀をしながら言っていると、突然夏川君が吹き出した。

「ハハッ、何回『ありがとう』と『ごめんね』言うんだよ。 ククッ、ヤッベ。ツボッた!」

と言いながら爆笑している。

…そんなにおかしかったのかなぁ?

首をかしげていると、「ごめん、ごめん」と謝ってきた。

「あんなのどぉってことないから」

「ううん。 すっごく助かった!ありがとう!絶対この仮は返すからねっ!」

そう言うと夏川君は一瞬、"えっ?"って顔をしたけど、すぐ笑顔になった。

「んじゃ、今度何かあった時は木原に頼むわ」

私は勿論笑顔で、「うんっ!」と答えた。


――これが、私の恋の始まりだったんだ。