「ラッキーじゃん!!智ちゃん、悪さしても見逃してねぇ?」

ふふん。
これなら、遅刻しても怒られなさそう!

「うっ…そら、咲羅さんだし、…少しわ…?」

「ありがとー!!智ちゃん!!」

「で、名前は?」

駿は、欠伸をしながらそう聞いてきた。
その意味を察したらしい智ちゃんは、「あぁ。偽名ですか…。」と呟いていた。

「うん。松井 凛にしようと思うの。」

ケロッとそう言った私に対して、駿と智ちゃんは、びっくりしている。

「?どうしたの、二人とも。」

「どうしたの、じゃねーよ!!」

駿は、ひどい剣幕で私に迫ってきた。
は?てか、顔!近い!!
…あ、駿良い匂いする。どこの香水だろう。

「そーですよっ!」

智ちゃんも、私に寄ってくる。
ちょ、何なのよ!!

「お前っ、その名前!!」

…あぁ。名前、ね。

「あの女のっ!!クソ女のっ」

ーヒュンっ
その風の音と共に、私の拳は駿の顔面の横にある。
駿も、少しバツが悪そうな顔をした。

「…、あの子を、侮辱するのは許さないよ?…例え、駿だとしても、ね…。」

少し殺気を出してそう言えば、駿は舌打ちをしてから、「悪かったよ。」と謝った。

「…でも、いいの?咲羅さんは…」

智ちゃんも、その事か。

「うん。ケジメ、つけようと思って。」

「ケジメ…?」

不思議そうな顔をする二人。

「私は、新しい場所に来たけど、でも…まだ、あそこでのコトは終わってない。だから…、あの子の事を忘れないように。」

「新しい場所って、お前アイツを助けるために来ただけだろうが。」

「…まぁ、ね。」

それは、そうだけど。
私は此処で、あの子のいない所にいるから、忘れないように。
あの子のことも、アイツのことも、
あの日のことも。