「ん。偽名、でしょ?」

私は駿を遮って言った。腰かけていたソファーから私は立ち上がり、理事長室から出る扉へと向かった。

「考えてんのか?」

そう聞いた駿に私は扉の前で「当たり前。」と言った。

「さすがだな。あ、待てよ。お前、クラス分かんねぇだろ?」

駿にそう言われ、気付いた私は開けかけていた扉を閉め、もう一度ソファに腰を下ろす。
そんな私を駿は鼻で笑った。

「ちょっと、待てな?担任呼んでくらぁ。」

そう言って、駿は理事長室を出ていった。その直後、放送の声が聞こえてきた。

《えー。高橋先生、至急理事長室へ来てください。三分以内に来なかったら……分かってま
すよね??》

…。
駿のドスの聞いた声が校内に響く。一般人ならこれだけできっと、失神してしまうだろう。
駿は、関東No.1の暴走族《飛翔(ひしょう)》の元総長だったんだ。
放送が終わってすぐに、駿は理事長室へと戻ってきた。それから、すぐにバタバタと廊下を走る音が聞こえてきた。
ーバタンっ

「駿さんっ!!あの呼び方はやめて下さいっていも…!!」

扉が開いたと、同時に大きな声が聞こえた。
って!!

「智ちゃんっ!?」

「あ…!!咲羅さぁん!!」

智ちゃんとは、《飛翔》の元副総長で駿の大切な仲間だ。フルネームは、高橋 智明(ともあき)
。ってことは…

「智ちゃんが私の担任っ!?」

「そゆこと。」

駿は、腹立つぐらいの笑顔でそう答えた。