名前は職業は伏せて、ただ好きな人と称して。


その男子は3年間クラスが同じだったから、私も気兼ねなく話せる相手だった。

お兄ちゃんみたいな感じだったから、私も素直に打ち明けてしまったんだろう。



そして、言われたんだ。



『行け!!』



たった一言、されど一言。
それに背中を押された。



「ごめんっ、3時には戻って来るから!」



そう親に告げて家を飛び出した。


塾に行くと、私は真っ先に和ちゃんの自転車を確認した。

ない。
まだ、出勤してない。


和ちゃんは電車通勤だったけど、最寄駅から塾までは自転車を利用していた。



待ってるだけじゃ何も始まらないと、私は塾に足を運んだ。

随分と驚かれたけど、皆どこか嬉しそうで。


そこには和ちゃん以外の先生が揃っていた。



「高里先生ならもうすぐいらっしゃるんじゃない?」



と荒川先生が笑った。