その頃にはこのあだ名が定着していた。


“和ちゃん”。

私は今でもこのあだ名を使っている。




そしてこの頃、私には仲の良い男子がいた。



「さよならー。」



先生に挨拶して自転車を漕ぎだすと、隣を並走するもう一台の自転車。

それは、持田だった。


仲良くなった私たちは、塾の帰りを一緒に行くようになった。


雨の日も一緒に帰る。
傘がぶつかるほどの距離にドキドキした。

たまたま父に目撃されて彼氏かとからかわれた。


違うと否定したけれど、それはすぐに本当になる。



「可愛い。」



その言葉を何度言われたことだろう。

今思えば、その言葉に舞い上がっていただけだったのかもしれない。



「好きです、付き合って下さい!」



そう来たメールに、私は迷うことなく「はい」と返事を送った。