「ごめん、大丈夫だった?」




彼の発した言葉でやっと我に返る。




「ははははい!わ、私はだだ…大丈夫です!」






ちょっと…!あたしってば動揺しすぎ!
何言ってるか分らないじゃない!






「そっか、よかった。ごめん、俺急いでて……って、ああ!」





突然の大声に思わず体がビクッと跳ね上がる。





「俺、職員室行かなきゃなんだった!ごめん、このお詫びはあとでちゃんとするから!」






そう、あたしに叫びながら校長室とは反対方向に走っていく彼。





あんなに急いで、なにか大切な用事でもあったのかな…




私は彼が走っていった方向をしばらく見つめていた。











ーーーーートントンッ





「どうぞ。」






校長室の扉をノックすると中から女性の声がする。





麗宮高校の校長先生は女の人だとおじさんから聞いている。





「失礼します。」




ゆっくりと扉をあけると、手前にテーブルがあり、その両脇には大きなソファーが2つ。

そして、その奥にはまるでどこかの社長のような椅子に腰掛けた雰囲気のある女性の姿。


あの人が校長先生……



あたしが入口で立ち止まっていると、校長先生はゆっくりとあたしに近づいてきた。





「貴方が橘未来さんね」


「は、はい!」




近くで見ると、物凄く美人……

年齢は40代くらいに見える…




ん?まてよ…?

校長先生は確か、おじさんの同級生だったはず……




おじさんの年齢は56歳……ってことは、この人も56歳なの!?






「ようこそ、麗宮高等学校へ」




目を見開いて動揺するあたしに対し、校長先生はニコッと微笑んだ。