堀江達は秘湯で心も体も温まり、家路に着いた。

ヨシコ『香織ちゃん、なんかいい事でもあった?』

香織『何で?』

ヨシコ『だってずーっと笑顔じゃない?』

香織『そんな事ないよ!』

奈緒美『そう言えば使命って見つかったの?』

香織『まだじゃ。でもなんか分かったような気がする使命じゃなくて何かが』

ヨシコ『そっかよかったじゃない!』

奈緒美『憑依ってさ、なんでできるのかな?』

香織『なんで?基本的に憑依する場合は悪い意味もあるけどいい意味もあるんじゃ』

奈緒美『いい意味?』

香織『うん。だけど取り憑いた事がないから分からんな。』

奈緒美『私がね、お兄ちゃんの体、壊したの不随にしたの』

ヨシコ・香織    『 え? 』

奈緒美『お兄ちゃんが猿に怯えてるじゃない。あれは私なの』

ヨシコ『何言ってるの?奈緒美さん?』

香織『そうじゃ。生身の人間が憑依される事があっても憑依するなんて無理じゃ!』

奈緒美『うん。でも違うの、私がお兄ちゃんに乗り移ってわざと事故を起こしたのよ・・・』

香織『なんと・・・』

ヨシコ『まさか!何でそんな事?』

奈緒美
『昔ね、私達家族は貧乏だったの。お父さんの会社が大きな会社につぶれてしまって、

そのことでお母さんも体調崩して、お父さんが看病してたんだけど

疲れてしまって、二人で自殺したの。

でもお兄ちゃんは泣かなかった。

泣けなかったの。私が居たから。

それからお兄ちゃんは必死で仕事して私を育ててくれたの。

悲しかったけどお兄ちゃんが居てくれたから私は幸せだった。

ヨシコ『じゃ、なんで?』

奈緒美『お兄ちゃんは誰よりも努力して会社を大きくしたわ。

お父さんやお母さんが苦しんだお金に負けないように、そして会社が大きくなるに連れて

お兄ちゃんも人が変わっていったの。

お母さんやお父さんを追い込んだ人達みたいに。

私も始めはお兄ちゃんに従ってたけどいやになったの。

だから、実行したの。

お兄ちゃんに憑依して事故を起こしたの・・・

鏡を見て思ったわそこに写るのは私じゃなくて鬼の顔をした私の姿だった。

お兄ちゃんは病院でずっと、今もきっとその姿にうなされているの。

ヨシコ『そんな・・』