「お兄ちゃん……アツ君死んじゃったらどうしよう」
「真琴………」
「もし重い障害残ったら……」
「悪い事ばっかり考えるんじゃない!」



俯いて悪い事ばっかり呟く私の肩を抱きながらお兄ちゃんが珍しく口調を荒げる。




「大丈夫だ……」




優しく頭を撫でてくれる。アツ君のようなしなやかな長い指じゃない。ゴツゴツしたの太い短い指。でも昔から知ってる安心する手………




「俺は見くびっていたんだな。この前言ってた事も口先だけじゃなかった。アイツはしっかりお前を守ってるよ」
「うん…うん」





私もそう思う。いつもいつも守られて……大事にしてくれて。今度は私が守るから。ずっと側にいるから。


だから……


アツ君どうか無事でいて………













-カチャ-





「ありがとうございました」



「凜さん!」





部屋の中から出て来た凜さんに飛び付く。
アツ君は?アツ君は!?





「真琴ちゃん…」
「はい…はいぃ…」





凜さんは神妙な顔で病室を指差す。





「篤のとこに行ってあげて」





この言葉に弾かれたように病室へ。そんなにひどいの?車にぶつかったんだもん。
早く顔が見たいよ!







-コンコン…ガチャ-





病室に入ると私達を隔てる白いカーテン。





ドクンドクン…





血の気が引いて手の平が汗ばむ。心臓が痛い。足が竦む。
震える足を奮い立たせゆっくりカーテンに手を掛ける。





「ア……ツ……君?」





消え入りそうな声しか出なかった。絞り出した精一杯の声。








「あ、マコ?」

「!!」





返事が返って来た!?しかも……あれ?元気な声!