「私……帰る!」
「えっ!?」
そんなお兄ちゃんの彼女ならぜひ挨拶しないと、妹としては。
「いや、今は帰らない方いい……と思う」
「どうして?」
「いや、どうしてって……う~ん」
「何もないでしょ?」
「何もなくもないっつーか」
「いいよ。私一人でも帰れるし。アツ君の手を煩わせたりしないよ」
「それはダメ。夜道を一人で歩かせる訳いかない。大事な彼女だもん………どうすっかな」
ポリポリ頭を掻いて困り顔。多分この時アツ君にはお兄ちゃん方の状況が妹である私を家に寄せ付けたくないことは想像付いてたんだと思う。
でも、私のかたくなな態度にアツ君根負けしたみたい。
「分かった帰ろ。彬良さんの事情なんか知ったことか」
「何?」
「なんでもない♪バイクで送るから」
後半はほとんど聞き取れなかったけど、うまく誤魔化された。
バイクはアツ君の趣味の一つ。乗るのは初めての経験。
ゆっくり運転してくれたからさほど怖くはなかった。
-キィッ-
バイクが家の前に着くとそそくさと降りて玄関を開ける。見るとお兄ちゃんのスニーカーの脇には大人っぽいデザインのヒールが高いサンダル。彼女のだ。
そそくさと上がるとリビングに明かりがついてない。
お兄ちゃんの部屋かな。
パタパタ階段を上がって、今日に限ってノックをするのを忘れていた。
-バンっ!-
「お兄ちゃん」
ニコニコ笑顔を作って部屋に入った私は目の前の光景に……完全に思考停止。
そこには全裸のお兄ちゃんとナイスバディ(しっかり見てる)の女性がプレイ中に一時停止しながらビックリ顔でこっちを見ていたんだもん。
「…………キャ―――――――――――――っ!!」
三秒後。家中に響き渡る私の悲鳴。そのまま余りのショックと驚きに…………気を失ってしまった。