「親父、おふくろ。
コイツさっき話した今付き合ってる彼女」
「伊藤真琴ですっ。はじめまして!」
部屋に入るなり床に頭が付くんじゃないかってくらい思いっきり頭を下げる。
だってだって…初対面なのに挨拶出遅れるなんてイメージ超マイナスだよぅ。
「元気のいい子だな。挨拶がきちんと出来る娘は嫌いじゃない。顔を上げなさい」
恐る恐る顔を上げると、ソファーにどっしり腰掛けた恰幅のいい、厳粛そうなお父さんとその隣りに立つ小柄で控え目な感じのお母さん。
じっと見られてる。観察されてるのか値踏みされてるのか……。
人前は苦手。どうしたらいいかわからなくて、アツ君を見上げる。
私の視線に気付いたのか、ふと視線が合う。優しく細められた目。ギュッと手を握る手に力が籠る。
「可愛いだろ。俺が一目惚れしたんだ。見た目も性格も超好き」
「アツ君!?何言って………」
絶対ご両親引いてるよ!
ワタワタと慌てる私を見てクスクス笑うお母さん。ほらぁ……もぅ泣きそう。
「ホント可愛いお嬢さん。眼がとても綺麗ね。今まで何人か見掛けた娘達は挨拶もマナーも出来てなくてあまり好きになれなかったけど……大事になさい」
ニコニコ顔でズバリ言いたいことを言うお母さんにビビりながらもなんとか顔を伏せないで頑張った。
その間にも髭を撫でながら黙ってしかも表情なく聞いていたお父さん。
今度は何を言われるんだろ……
一日でこんなに何回も緊張することはめったにない。心臓がバクバクで体はブルブルで今にも気を失いそう………
そんな状況でお父さんの口から出た言葉はとても意外だった。
「………可愛いなぁおい♪篤には勿体ないんじゃないか?若い頃の母さんにそっくりだ♪」
呆気にとられる私を見てガハハッ♪と豪快に笑う。