それを聞いた瞬間、両脇から組まれてた手をスルッと外した。




「その発言、人間として引くね。俺お前らと付き合う事、絶対ないから」





普段女の子に強くは言わないから皆呆気に取られてる。



そんなの無視して早足で少し先の横断歩道を渡る。




「ヤベっ……」





向こうから大型のトラックが走って来る。
このままじゃ絶対危ない。




駆け足で近付くと傘を投げ捨て、ガードレール越しに腕と腰に手を回して女の子を一気に引き上げる。






-ザ――――っ!!-





「わっ、ぷ……っ」





間一髪女の子を助けたけど、その代わりに思いっきりトラックの跳ねっ返りを浴びてしまった。



二人とも全身ずぶ濡れ………





「ちくしょ…スピード落とせっつーの…」






濡れてぺそっとなった髪をかき上げる。




「あのっ、ありがとうございました」



か細いけど可愛らしい声。
俺より随分と小さい背。
下を向いてて顔はよく分かんない…………と思っていたんだが。







「大丈夫だった?あ、猫……………は」





女の子が顔を上げてこっちを見た瞬間、心臓が一気に跳ね上がった。




髪は濡れて顔に張り付いてるけど、白い肌、化粧してないスッピンだから濡れても落ちることはない顔立ち……………






紛れもない、写真で見た真琴ちゃんがそこに立っていたのだった。




-うそ………だろ…?-





こっちの動揺に気付くわけもなく、ブレザーの胸元を開けて見せる。
そこには泥だらけの、でも安心しきった様子の猫がひょっこり顔を出した。





「怪我してますけど大丈夫でした」
「そっか………よかった」





この時、俺は本気でこの娘を彼女にしたいと思った。





猫と同じくらいずぶ濡れて泥だらけになったのににこっと俺に向けられた笑顔が
堪らなく可愛かったから。