ある日、クラスの奴等男女数人とカラオケ行った帰りの事。
薄暗くなった雨の繁華街をワイワイ歩いていた。
「ねぇアツ~。そろそろ私と付き合おうよぉ♪」
「え~私とだよ。二週間も我慢してたら体に悪いよ~☆」
両腕に絡み付いて来る女の子達。
「そういえば篤が彼女いなかったことなんかあったっけか?」
「ないない。俺中学から同じだけど隣りに女いなかったことなんかない!」
「アツ~お前我慢できんの!?」
「お前ら……人のことなんだと思ってんの?」
まぁそうなんだけどさ。でも今は誰がなんと言っても他の娘と付き合う気なんかないんだよ。
「うわ~あれ見て。超汚~い」
右腕に絡んでた娘が道路を挟んで反対側の歩道の方を指差す。
その指差す先…………
車道の隅に茶色の猫が頭だけ持ち上げて弱々しく泣いてる。
-怪我してんのか?-
その脇を車が通る度に轍に溜った水が猫を濡らす。
猫のすがるような声に気付かないはずないのに、周りは皆見て見ぬ振り。
その時だった。
「やだ、あの人よくやるね~」
今度は左側にいた娘。
猫の方を見ると、人が一人、猫に近付こうとしてる。制服姿の女の子。赤い傘を置き、ガードレールを跨いで車道の脇にしゃがみ込んでいる。
「あれ、S女の制服だろ?あんなとこいたら車、危ねぇよなぁ」
「車気付かなかったらヤバくね?」
男子達の会話に、女の子達は早く立ち去りたいふう……。
「バッカじゃないの~?あんな猫なんか放っておけばいいのに」
「ホント~。超無理だよね。制服汚れるしさぁ」
俺はこの時、この娘達の自分中心の考え方にムッときていた。
「猫、可哀相じゃん?」
「え~でも汚れるしさぁ」
「助けたって死んじゃうかもしんないし~。あと面倒じゃん?」