クスクス笑ってる。
笑われてもいいんだ。凄く伝えたいんだもん。
「アツ君の笑顔とか、この寝顔もその…唇も既にきっと誰かが経験してる。私はアツ君の初めてを貰えないんだろうなぁってちょっと寂しかったら。幼稚な考えだけど……私は全部が初めてだから」
またチラッと見ると、正面を向いたまま。
「でも貰えたんだよね。さっきお友達が言ってた。こうやって肩抱いてくれるの私が初めてだって。手を繋ぐのは初めてじゃなくてもアツ君から繋いでくれるのは私が初めて…あっ!ってことはずっと前から貰ってた!?……なんだ。そっかぁ♪」
なぁんだ。簡単なことだったんだ。難しく考えなくても私はもうとっくに貰ってたんだね。
鬱々考えてた自分がおかしくて………笑いが止まらない。
「クスクス……ごめんね、何か一人で笑っちゃって。何でもないの。忘れて」
目尻にたまった涙を拭いながら呼吸を整える。
すると、急に目の前の日差しが遮られる。考える間もなく目の前にはアツ君の整った顔、唇には柔らかい感触。
「!?」
すぐに解放してくれたけど、なにせ急で何より人前で…な出来事に思考ストップ。
「マコがあんまり可愛いこと言ってるからキスしたくなっちゃった☆」
アツ君のいたずらっ子のような笑顔にまたゆっくり思考が再会。
「あのね。俺のほとんどはマコが初めてだよ」
「?」
アツ君の言葉の意味がよく分からなくて首を傾げる。
「行為自体は残念だけど初めてじゃない。でもここ……」
私の肩を抱いていない方の手で自分の左胸を指してみせる。
「女の子と付き合ってここがこんなにドキドキするの初めて。
顔見てるだけでも、手を繋いでても肩を抱いてても、抱き締めたりなんかしたらドキドキと緊張でおかしくなりそう。それから……」