「はー…………っ」
眠い目をこすりながら洗面所の鏡を覗き込む。
-うわぁ…目、赤いうえにクマまで…昨晩も眠れなかったからなぁ……-
やっぱり色々考えちゃって、ウトウトし出したのはついさっき。それでもアツ君との約束があるから目覚まし通りに起き出した。
赤い目は前髪でなんとか隠して、動かない様にピンクのクリアビーズでできた花モチーフのピンを止める。
けど、顔色の悪さはなんともなんないなぁ………自分で言うのも何だけど、なんかますます冴えない娘に見える。
でも………アツ君、こんな私でもいいって言ってくれた。今日は苦手な外デートだけど…少しは自信持ってアツ君の隣りにいなきゃね。
そして、一晩考えた事。今日は勇気出して私の行きたいとこに……誘ってみようかな。
-ピンポーン-
「来たっ……」
慌ててバッグを掴んで玄関に走る。
そこには仁王立ちのお兄ちゃんと対峙するアツ君の姿。
今日もとってもかっこいい。昨日の今日だし何か恥ずかしいなぁ。
「ごめんね。おまた……せっ、わっ」
お兄ちゃんの脇を抜けて玄関に降りようとしたら、仁王立ちにして出してた足に引っ掛かって前のめりに。
グラッと傾いた身体をお兄ちゃんより先に支えてくれたのはアツ君だった。
「おはよ」
「おはよ…っ……ごめんね、そそっかしくて…あの…下ろして?」「ん?」
転びそうなのを支えて貰っただけなのに。そのまま持ち上げられて、床に足が付くことはなかった。
何故かアツ君に抱き上げられてしまっていたから。
「お前~………」
「なんすか」
お兄ちゃん顔が怖いよ~。でもアツ君、全然悪びれもせずしれっとしてる。いいの?
軽々私を抱いたまま玄関に出ていた白いサンダルを拾い、ニヤッと笑う。
「じゃおかりします」