「大丈夫。これは夢じゃないし、俺はどこにも行かない。ずっとマコの側にいる……」




アツ君の声はゆっくりと優しいアルトの響き。




「だから…言って?」




耳元でそう囁かれて口から心臓が飛び出そう。




今の私に必要なのはちょっぴりの勇気。



意を決して、シルバーのピアスが光るアツ君の耳に唇を寄せる。





「……好き。アツ君が大好きなの。ホントに私、好きでいて…いい…の?」





語尾が震える。身体に回された腕にほんの少し力が込められる。




「そんなの…いいに決まってる。どうしよ、俺今超嬉しいよ。気持ちが通じるってこういうことなんだな………」



腕が緩められて、アツ君を見上げると目と目が合う。優しいまなざしが私に少しの勇気と自信をくれる。




「私と一緒に居て恥ずかしくない?不似合いだって笑われちゃうんだよ?」


「そんなの関係ない。誰がどう思っても俺は全然気にならないよ。それよりもっと自信持て。ベタ惚れしてんのは俺の方なんだからさ」



またぎゅって両手を握ってくれる。





「にゃ~ぉぅ………」




二人で振り返るとベッドの上でミイヤが鳴いている。





「この猫、茶色じゃなかったんだな」
「えっ?」




何だかアツ君、ミイヤを知ってるふう。ベッドに近寄り、顎を指で撫でてる。ミイヤも気持ち良さげにされるがまま。




「コイツ、あの時道路の脇にいた猫だよな」
「なんでアツ君知ってるの?」
「覚えてない?あの時初めて実物のマコに出会って、内面の優しさに触れて、あ~やっぱりこの娘がいい。彼女にしたいって思ったんだぜ、俺」



-あ………-




「もしかしてあの時助けてくれた人ってアツ君だったの!?」

「今ごろ気付いた?」



アツ君苦笑い。
だってあの時コンタクト流れちゃって視界ぼやけてたし、実際それどころじゃなかったし……。