笑ってる姉貴。
笑い事じゃねぇよ。こっちは大事な娘を失うかも知れねぇのに。





「タラシってちょっと失礼よね。私の弟なのに」

「なぁ姉貴………」

「ん~?」




「大事にしたい娘が出来たんだけどさぁ。今までの女関係をすっぱり断ち切ったつもりだったのに、いつの間にか反感かってて彼女を攻撃されて泣かしちまって……これどう思う?別れるしかないの?」




普段女の子のことで姉貴に相談したりしないけど、今回に限っては藁をも縋りたい心境。




「篤はどうなの?別れてもしょうがないって諦めるわけ?」


「別れたくねぇよ!初めて俺から好きになった娘だもん。
でもその娘、俺がこんなんだから自分地味なの気にしてて……俺は十分可愛いと思うよ。でも見た目だけで好きになった訳じゃないんだよ」




胸の内にあったものをこの際全部吐き出した。





「告る前にさ、怪我した猫助けてるの見かけたんだ。周りは見ない振りしてるのに、自分汚れるの気にしないで泥だらけの猫抱えて………素朴で素直で優しくて。そんなとこも全部好きなのに、彼女俺と一緒に居ても絶対我が儘言ってくれない。心を許してくれてないっつーか……」




「言えないんじゃないの?」


「なんで」





「嫌われたくないからじゃない。自分にコンプレックスあるから、迷惑かけれないとか我が儘言えないって思うんでしょうね。健気じゃない。それだけあんたが好きってことじゃないの。それがわからないようじゃ、今まで女の子と付き合って何を学んだのってことよね」



姉貴はベッドから立ち上がり、腰に手を当ててこっちを見下ろす。



「ただのタラシで終わらないようにせいぜい考えなさい」




それだけ言い残して部屋から出て行った。




-考えろったって…-




「はあっ……」





窓に寄ってロールカーテンを開ける。空気が澄んでるから星がよく見える。




-マコも今この星見てるかな……-