その後、いつまでそこに居たのか、どうやって帰ってきたかわからない。
気付いたらいつの間にか家に居た。




我が家は共働き。だからご飯作るのは私の担当。
大学生の彬良お兄ちゃんはよっぽどのことがない限り、夜はぶっそうだからと家に居てくれる。



高校まで柔道をしてたお兄ちゃん、ガタイよくて見掛けは硬派で武骨な感じだけど、実は女の子に優しくて、ケーキ作るとホールごとペロッと食べちゃう位甘い物が大好き。


私はそんなお兄ちゃんが大好き♪





なんだけど――――





夕飯の肉じゃが食べたお兄ちゃん。



「おい、真琴………」
「何?」




「……………塩辛くない?」
「…へ?」




一口食べてみる。




「うっ、やだ……間違っちゃった」
「珍しいな。いつも完璧に旨いのに」





もぅ………アツ君のこと考えてたからだ。


もう別れちゃうんだと思うと、今まで見たいろんな顔が浮かんで、声が聞きたくて、胸が苦しくなる。





私がはぁっと溜め息ついたのに気付いたみたい。




「なんかあったのか?」


「…………ねぇ。お兄ちゃんも彼女にするなら頭がいいとか、可愛いとか美人がいいんでしょ?」



箸を置いて眉を潜めるお兄ちゃん。





「頭が良い訳でも顔が良い訳でもない。なにも取り柄がない娘はどうすればいいのかな…………」

「なんだ真琴、好きな奴でもできたのか?」




「…………………もうダメかもしれないよ」





いろんなものが込み上げて来る。前が霞んで見えない。





「お兄ちゃ~ん………うぅっ…………私別れたくないよぅ………」

「お前彼氏居たのか!?兄ちゃん聞いてないぞ?」



泣きながらアツ君の事全部話した。凄く格好くて良い人で私の事好きって言ってくれるけど。何もかも完璧過ぎて自分に釣り合わないんじゃないかって悩んでる事。




お兄ちゃん黙って聞いてくれた。