慌てて後を追おうとすると「お客様、おつりを……」と店員さんに呼び止められる。






「騒がしくしてごめんなさい!あの……とても美味しかったです」





ペコペコ頭を下げてお詫びをすると、お会計をしてくれたウェイトレスさんがにっこり笑ってくれた。




「また、いらしてください♪」





その笑顔が素敵で、もう一度頭を下げてお釣を受け取るとすぐに外に出た。






出た瞬間、アツ君の怒鳴り声。




いつもはゆっくりと優しく喋るアルトが心地いいのに、今は別人みたい……。




今まで一度も聞いた事ない大きい声で女の子達を怒鳴りつけてる。




「………俺らしくないって何?女囲ってヘラヘラして誰とでも寝て……それが俺らしいっての!?」

「アツ…アツごめん」
「いい加減にしてくれよ!自分達の理想押しつけんな!やっと好きになれる娘見つけたんだ。お前らにぶち壊されてたまるかよ!」




「アツ君もういいよ……」




感情的なアツ君。
こんなに想ってくれるのは嬉しいけど……私と付き合ってるとこういう事になるんだよ。


迷惑かけたくないよ。



「アツ君。ごめん………ごめんね」





私は走り出した。





後ろからアツ君が何か言ってる。でも振り返らず走った。





右に曲がってすぐに路地にはいる。
アツ君の事だからきっと追いかけて来るから………。







目の前には長い階段。なんとなく登ってみる。

上は公園になっていて、街が一望で来た。この辺は初めて来たけど、こういうとこ、あるんだ。





高い所は嫌いじゃない。手摺に掴まって景色を眺める。




周りが段々オレンジに染まり始める時間。





「綺麗だなぁ。一緒に来たかったな……」





何を買って欲しい訳でも、どこに連れて行って欲しい訳でもない。



ただ……一緒に居たかった―――――