「ははっ……自殺って……まさか」

俺は引きつった笑いを浮かべて答えた。
思い返すと無意識で川に飛び込んだ。
死ぬつもりだったのかはわからない。
自分でした事なのに意識がぼんやりしてわからない。

「……本当に大丈夫?」

男は俺の横に来てそう尋ねた。

「……わからない……」

俺はつぶやいてその場にしゃがみ込んだ。
あれ?
俺、何を考えて川に飛び込んだんだっけ……。

考えても覚えていない。借金返済をどうするか考えてた。
ただそれだけは覚えている。

ぼーっとしていると男が再び尋ねてきた。

「歩いて帰れる?」

「家には……事情があって帰れないんです」

「……事情って?」

「変な男が家の前で待ち伏せしてて……」

冗談まじりでそう言うと男は俺を上から下まで眺めた。

「訳ありだね。大丈夫、大体わかったから……」

えっ?
大体って何が?

わかったの?

今ので本当に?

俺はポカンとして男をみあげた。
男は俺の腕を持ち、立たせてから笑顔を向けた。

「僕も経験あるよ、だから君の気持ちがわかる。大丈夫、辛く悲観的になるのもわかるから……」

「え、あ。はい」

なんの事だよ。
ワケわかんねーぞ……。
俺は心の中でつぶやいた。

「……とりあえず僕の家に来る?」

「え!?いいんですか?」

「びしょ濡れとその臭いは勘弁だけど君がまた川に落ちて死体としてニュースに出たりしたら嫌だからね」

「あー……」

返す言葉もなく俺は男に頭を下げて一晩、世話になる事にした。