勢いよく水面から顔を出した。
同時に悪臭が鼻をつく。

くさっ。
川の水、くさっ!?

なんだよ!?
汚い川だな……クッソ……。

俺は意味不明な行動の後、急に冷静さを取り戻した。

ここの川は側溝のような形をしている。
周りを見渡しても川から上がれる場所がない。

何してんだよ俺は……。
壊れて奇行に走った事を後悔した。
俺はずぶ濡れになりながらバシャバシャと水音を立てて、川から上がれそうな所を探し歩いた。

周りに人がいなかったことが幸か不幸か川の中をひとり歩き回った。

しばらくしてハシゴ階段を発見した。
川から上がれると思い、夢中で駆け出した。

しかし川から這いずり上がった瞬間、目の前で悲鳴がした。
声の方に目をやると、ヒョロヒョロした体型の男が一人呆然と立っていた。
俺は焦って弁護した。

「すいません、怪しい者じゃないです!川に落ちてただけですから!」

変質者扱いされるのはごめんだ。
しかし、男はますます俺に不審な目を向けた。

「本当に驚かせてすいません!俺、まじめに川に落ちただけなんで!」

そう口走った後、まじめに川に落ちたって何だよと自分で突っ込んだ。
男は恐る恐る俺の様子をうかがった。

「……大丈夫?……怪我は……」

「あ、全然!本当大丈夫なんで!」

俺はわざとらしく明るく笑い、そそくさとその場から逃げ出そうとした。
びしょ濡れで悪臭を放ち笑いながら立ち去ろうとする俺を男は呼び止めた。

「自殺とかじゃないよね……」

その言葉に衝撃を受け、俺は立ち止まった。