「入金するからカード出して?」

「えっ……」

「コンビニのATMから返済できるところ何社あるの?」

振り返った市ヶ谷に俺は目を見開いて固まった。
こいつ……本気で俺の借金、返済する気か?
固まった俺に構わず市ヶ谷は顔色ひとつ変えず尋ねた。

「それとも口座から引き落とし?」

「あ……いや、三社……あるけど……」

半信半疑で生乾きの財布からカードを取り出す。
市ヶ谷は俺にATMの操作を促すように身を引いた。
俺はやはり半信半疑で返済の手続きに進める。

「今は手持ちがないから取り合えず一社、五万。三社で十五万でいいよね」

ポケットから自らの財布を取り出した市ヶ谷は平然とした様子で金をATMに突っ込んでいく。

マジかよ……

俺は目の前で起きていることに驚愕しながらカードを代わる代わるATMに突っ込んだ。
今月はこれで助かった安堵と、同時に躊躇いなく金を返済する市ヶ谷に戦慄する。


「一括返済したいなら電話で連絡いれないとね。どうする山科君?」

「……本気で言ってるのか……」

「君が僕との約束を守ってくれるならね……」

その言葉で頭に昨日の死体が浮かんだ。
一気に血の気が引いていく。