「ああ、よかった。連絡がないから来てくれないんじゃないかって、ひやひやしたよ」

「ちょっと、ぶらぶらしてたら遅くなっちゃって」

武は後頭部を掻きながら答えた。

「うん、女の子はもう来てるから」

ほら、そこ。

と、カウンターの一番端に座っている白いワンピースの女の子を指差した。

「わかった。ありがと」

武は形ばかりのお礼を口にして、ゆっくりと彼女の方に歩く。

その女の子はこちらを見ることなく、

目の前のグラスの中身を見つめているようだった。

確かに髪の毛は黒いけど、どうせまたいつものように期待はずれだろうな。

はやる気持ちを抑えるように言い聞かせ、うしろ姿に声をかけた。