氷が溶けてほとんど水の味しかしなくなってしまったアイスティーを、一口飲んで雑誌を閉じた。

口の中に、ほのかに紅茶の味が感じられた。

とりあえず20着ほど選んだので、この中から由加里に厳選(げんせん)してもらえばいいだろう。

そう思い、ページ数と特徴を書いたレポート用紙を破って上から目を通してみた。

20個目から少しあけて、下のほうに二、三行書き足しておいたものに目をとめる。

そこにはページ数と七部丈のヒッコリーパンツ、チャコールグレイのカットソーと書かれていた。

雑誌の中で男性モデルが着ていたものだ。

武に似合うと思って、取り寄せてもらうつもりで書いたけど、由加里にからかわれるのは諦めるしかないだろう。

楽しいことではないというのに、何故か顔には自然と笑顔が浮かんでしまう。

こんな気持ちになったのはいつ以来だろう。

遠い記憶の引き出しを覗きながら、グラスの中の、もはや紅茶とはいえなくなったものを飲み干した。