「洋楽だね」

千華が言った。

「なんて歌ってるんだ?」

「そんなの、あたしがわかるわけないじゃん」

「そうか」

「そうだよ」

千華が呟く。

武はベッドに千華と並んで座り、流れてくる音楽に耳を傾けた。

歌詞はわからないが、とても気持ちよさそうに歌っている。

千華も微かに身体を揺らして楽しんでいるようだった。

一曲目が終わり、音がなくなった。

「もう一曲あるよ」

スピーカーから、漏れるようにピアノの音がこぼれだした。

とても懐かしい音だった。

どこかで聴いたような、懐かしい感じ。

少しすると、ピアノにヴァイオリンが加わり、チェロが参戦した。

三つの楽器が触れ合うように、互いに愛(いつく)しむように音を奏(かな)であっていた。

そして、囁くような声で女が歌い始めた。