「貸して」

片手でMDを受け取り、千華が小さな箱を積み重ねた機械の電源を入れた。

千華の部屋ではいつも見ていたが、触れたこともないし、CD以外は聴いたことがなかった。

そもそも武は、テレビも音楽もあまり興味がなかった。

初めのうちは珍しくて、一日中テレビの前に張りついていたこともあったが、

しだいに興味が薄れていき、今では千華の部屋以外で音楽を聴くことはなくなっていた。

千華は器用にMDをケースから出して、デッキの隙間に押し込んだ。

ウィーン、と小さな音を出して、デッキがMDを飲み込んでいく。

ほんの少しのタイムラグを経て、千華の着ているカットソーよりも少しだけ薄い色をしたスピーカーから、英語の歌詞が流れてきた。