武は千華の腕をほどいて千珠と由加里の間を進み、レジの横にある筒状のボールペン入れからはさみを引き抜いて右手に持つと、

Tシャツから覗く白い腕を由加里の前に差し出した。

何をするのかいち早く気づいた千華が止めようと駆け寄るのよりも早く、武は右手に持ったはさみを左腕に突き刺した。

そしてそのまま、一気に肘(ひじ)まで滑らせる。

白い肌にほのかに赤く線が走り、黒板消しで消したかのように、ほんの数秒で消えてなくなった。

千珠と千華は目をそむけ、由加里だけがその光景を注意深く見つめていた。