「しるふ」

聞きなれた声にふと視線を上げれば

「昼、どうする」

漆黒の海斗の瞳が見下ろしている

「ん、どうしようか」

見上げてくるブラウンの瞳に、ちょっと座って、という無言の声を聞いた気がしてしるふの隣に腰を下ろす

「どうした」

「ん、ちょっとね、昔を思い出してた」

ふふっと響くうれしそな笑い声

「国産霜降り黒毛和牛フルコース、美味しかったなーって」

ああ、あの付き合い始めて1か月位の

「あの時いろんな意味で覚悟したのにさ、ご飯食べ終わったら、送るって言って本当に送ってくれるんだもん」

ちょっと拍子抜け

と言いつつ少しほっとした自分がいたのは事実だ

そして海斗はきっとそれを見抜いていた

「未だに黒崎先生扱いだった御姫様に手なんか出せるかよ」

こっちの心情も慮ってほしいね

「とか言っちゃえるところがさ、海斗なんだよね」

思い返せば海斗はどんなときだって自分、ではなくしるふ、だった

そうやって守られていたのだと大切にされていたのだと

今ならわかる